先日、縁あって『スコッチグレイン』のヒロカワ製靴に行くことができました。今日はその時の様子をお伝えします。
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まずは革から見せていただきました。
これは裁断する前の牛革(たぶんサンプル)です。
1枚の革からできるだけ多くの革を使えるように細かく線がひかれています。基本的にお尻のいいところから順に使います。前足から首にかけての部分は可動域でもあり、どうしてもシワが残ってしまうため、あまり使いません。
厚みとしては、甲革で約1.3㎜、裏のライニングで1.2から1.4㎜くらい。ライニングは染色していないものを使います。ラッカーを塗っていないため、汗をよく吸うのだそうです。
これはドイツ…だったかな?ヨーロッパでなめした革です。
ツヤがあって柔らかく、とてもきれいな革でした。『スコッチグレイン』の『916オデッサ』に使われるそうです。この革を見ただけで履いてみたくなります。
見えにくいかもしれませんが、白く写っているところは小さなキズをチェックしたところです。キズの入っているところは使いません。
これは手作業でソールの金型を合わせているところ。この本革底にはステアが使われます。厚みにして約5.0㎜から5.5㎜。非常にしっかりとした革です。これにインソールや詰め物が加わるのですから、ある程度の重さになるのは当然のことですね。
ソールができてきました。
これはアッパーの革を釣りこむ機械にかけているところです。
この間の工程は少し端折りますが、このようになっていきます。
次はウェルトをつけていきます。すべての靴がグッドイヤー製法であるスコッチグレインには欠かせない部分ですね。
当たり前ですが、ウェルトもこうして見るとれっきとした革なんですよね。靴になっていると固いからあんまり感じられないのですが。
機械を使いますが、スイッチ一つで勝手に縫い付けられていくのではなく、人が靴を回すようにして縫い付けていきます。ガガガガガッ…とスピードも速いですから、熟練した人でないとできません。
そしてこの後さらにいくつかの工程を経て、いよいよ靴底の縫い付けに入っていきます。
何枚か写真を撮ったのですが、作業をしている人まで写してしまったので、そこの写真は伏せておきます。これもガガガガガッ!とすごい音がします。ウェルトと同様、人が靴を回すように縫いつけていきます。慣れていないと手まで縫っちゃいそうでコワイ。
普通のミシンは糸を通してある針が直接縫っていきますが、このグッドイヤーの機械の場合、ぶ厚い靴底を縫いつけるため、2本の針を使います。まず1本の針が革に穴をあけ、その開いた穴に向かって、糸を通した針が通っていく仕組みになっているのだそうです。なんて大変なことをやってのけるんでしょう。
今、世界中でグッドイヤーの機械が減ってきているらしく、新しい機械を納入する時や、修理でパーツが必要になる時は手配が大変だそうです。
これが縫い付けられた靴底。
かっこいい!いかにも靴、という感じがします。やっぱりいいなァ、グッドイヤー。
今度はソールの側面を磨きます。
写真では1枚ですが、磨きの作業はこれで終わりではなく、この後も違う機械でくり返し行われているようでした。徹底しています。
いよいよ完成に近づきつつあります。
ここはすでに紐が通されています。
サイズによって木型の色が分けられているそうです。鮮やかですね。
この後もまだいくつかの工程が残っています。茶色の靴は10人近い人たちが手作業でクリームを塗りこんでいました。本当に皆さん丁寧に作業していらっしゃいました。
検品する人もすべての靴に実際に一つ一つ手を入れてチェックしています。
全てではないですが、以上にして見学会は終わりました。
あらためて思ったことは、1つの靴を作るのに一体どれだけの人が関わっているのか、ということです。まったく想像と違っていました。
私はこれまで靴作りというのはもっと機械化――オートメーション化されているのかと思っていました。が、現場を見ると全然違いました。もちろん機械は使いますが、それは人が使わないと動かないものです。ロボットが作るような工業生産品ではありません。多くの人が黙々と作業に当たっている様は、靴づくりがいかに大変なものであるかを物語っているようでした。
ここに書いたのは作業工程のほんの一部にすぎません。これだけの手間がかかっているのですから、お店に出ている靴の値段も当然なものだと理解できます。原料の革からして高いのですからなおさらです。大事に作られている靴は、大事に履かなければいけないなァと思います。
ヒロカワ製靴の皆様、ありがとうございました。
最後に社長が語ってくれた言葉を紹介して終わりにします。
『コバもよくクリームを塗りこんでください。靴の持ちが違ってきますから♪』
なるほど!
※今回の写真の掲載はヒロカワ製靴の社長の御子息様に了解を得ているものです。
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